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06 / DATA GAP  多店舗経営のものさし

値引き販売がゼロの日、店は失敗したのか

スターバックスの「SAVE FOOD」から、店舗を比べるための分母を考える。

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閉店の時計を囲むパンと、店頭・モバイルの二枚の伝票の模式画COUNTERMOBILEDATA GAP / 06
EDITORIAL ILLUSTRATION / 売れる時間

閉店前の値引きで何個売れたか。その数字だけで店長を評価したら、通常価格でちょうど売り切った店は、何もしていない店に見えてしまう。では、よく売った店から何を学べばいいのか。スターバックスの食品ロス対策には、店舗間の数字を比べる前に読んでおきたい但し書きがある。

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同じプログラムに、開始時刻の違いを認める

スターバックス コーヒー ジャパンは2021年8月に食品ロス削減プログラムを導入した。同社が2023年に紹介した開発経緯によると、実施するかどうかは、その日の状況を見て各店が決める。値引きを一斉に始めることは、運用の前提に置かれていない。

同じ公式記事には、立川の店舗で働くスタッフが、値引き幅より先に食品ロスに取り組む理由を伝えるようにしている、という話も出てくる。売場で客が受け取るのは、安くなったという情報だけとは限らない。これは同社が紹介した一店舗の工夫で、その声かけが購買をどれだけ変えたかについて、この記事に数値は示されていない。

2025年12月1日の発表では、当日のフード在庫に応じ、閉店の約3時間前を目安に対象品を20%引きで販売すると説明した。同日からモバイル注文にも順次対応し、実施中の店では対象商品に印を表示する。重要なのは、店頭レジとモバイルで開始時刻がずれることがある、という同社の注記だ。

出典 S1出典 S2

SEON ANALYSIS

一つの販売数に、二つの仕事が隠れる

発注を需要に近づけて余りを小さくする仕事と、余った分を閉店までに届け切る仕事がある。前者がうまくいけば、後者が活躍する余地は小さくなる。値引き販売数の多さだけを評価すると、売れ残りを生みにくくした工夫ほど報告に表れにくい。これは制度から導ける可能性で、同社の店舗を順位づけた話ではない。

さらに、同じ時刻に同じ商品が棚にあっても、店頭で注文できる時間と、スマートフォンから見つけて注文できる時間が違えば、顧客に開かれた購入機会が違う。モバイルで売れた個数を比べるなら、まず対象品が残り、画面で注文できた時間を揃えたい。閉店の時刻だけを揃えても、この違いは消えない。

SEON FIELD VIEW / FIG. 06編集部による概念図

販売個数を比べる前の、一日の記録

01 開始判断何が残っていたか対象在庫あり → 販売機会を記録対象在庫なし → 分母ゼロを別記
02 購入機会いつ、どこで買えたか店頭 販売開始から終了までモバイル 注文可能な時間帯
03 閉店後何が残り、何を捨てたか値引き販売・残数・実廃棄を区別。途中の補充も記録。
対象在庫の有無で比較を分け、店頭とモバイルの購入機会、閉店時の残数と実廃棄を別に読む概念図。 同社発表[S2]を基に編集部が作成した比較手順。区画の幅は時間・件数を表さない。

経営判断

売り切った日の記録も、比較表に残す

本部の週報をつくるなら、一行を「店舗×営業日×商品」にする。実施しなかった日にも行を残し、開始判断時に在庫があったかを記す。在庫がなかった日を販売率ゼロと扱うと、通常販売で売り切った店の評価を下げてしまう。開始時の対象在庫がゼロなら、その在庫に対する販売率は算出しない。

在庫があった日には、開始時の対象個数、店頭とモバイルで買えた時間、期間中の販売個数、閉店時の残数と実際の廃棄量を続けて記す。途中の補充・取り下げは別欄に残す。残数の少なさだけでは、そもそも入荷が足りず早く売り切れた可能性もある。通常価格での欠品時刻を添えると、発注を減らす判断に偏りにくい。

余りが繰り返し多いなら、先に発注と品揃えを見直す。同程度に余っていても販売機会が短いなら、対象化の判断や表示の手順を確かめる。そこまで揃えても差が続く日に、初めて売場での伝え方を見に行く。好成績店の値引き時刻をまねるより、何を揃えればその工夫が他店でも働くのかを持ち帰る方が、横展開に役立つ。

NEXT OBSERVATION

次に現場で確かめること

同じ商品・曜日帯で、開始時在庫と閉店までの時間が近い営業日を選ぶ。店頭で買える時刻、画面で買える時刻、売り切れ、廃棄を一本の記録につなぎ、比較できない日は理由とともに残す。施策の因果効果を知るには、通常販売で終えた場合の見込みも別途検討する。

UNKNOWN
表示を見た人が値引きで購入を決めたか、値引きがなくても購入したかは、販売記録だけでは分からない。
METHOD / LIMIT
セオンによる実店舗の観測・店舗別実績の入手は行っていない。開始時刻の差は会社が示した可能性であり、特定店での遅延を指摘するものではない。値引き販売個数を廃棄削減個数へ換算していない。

PUBLIC SOURCE / 確認日 2026年11月3日

出典と読み方

  1. S1 現場の声から生まれたフードロス削減プログラムスターバックス コーヒー ジャパン / 2023-09-28開始の経緯と、日ごとに各店舗が実施を判断する設計。掲載されている従業員の声は同社の取材。セオン独自取材ではない。
  2. S2 「SAVE FOOD」のモバイル注文への順次対応を発表スターバックス コーヒー ジャパン / 2025-12-012021年8月の導入、20%引き、閉店3時間前が目安、在庫次第で実施有無・開始時間が異なり、チャネル間に時間差があり得る。全店・全日の実施を意味しない。
  3. S3 沿革(2026年度)スターバックス コーヒー ジャパン / 2026年度の沿革・掲載日記載なし12月欄でモバイル対応を実施事項として再確認。発表年は2025年。2026年11月3日当日の各店の対象在庫・実施状況は非確認。